2024年は1年間を通じて、世界各地にて様々な航空機事故が発生してしまいました。1月2日には羽田空港において、海上保安庁とJALの航空機同士が滑走路上で衝突する事故が発生しました。そして、12月に入ってからは、アゼルバイジャン航空8243便墜落事故とチェジュ航空2216便オーバーラン事故が発生しました。

ブルームバーグの記事によりますと、2024年の航空事故死者数は6年ぶりの多さとなり、死者数が際立っています。(以下のURL参照)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-30/SPB08QDWLU6800

それぞれの事故については、原因調査が行われることになりますが、今回の記事では事故調査手法について解説します。


航空機事故が発生した場合、次の手順にて調査が進められ、最後に類似事故が発生しないよう出来る限りの合理的な再発防止策が公示されることとなります。

1.事故発生

航空機事故が発生し、緊急対応が行われます。緊急サービスや消防隊が現場に到着し、生存者の救助や負傷者の治療が行われます。その際、救助を優先しつつも、事故原因の究明に必要な機体の保全も考慮されながら行われます。(空港の救助隊員は特別な訓練を受けています。

2.現場確認

救助が終わり、消火作業完了や燃料の処理など現場の安全が確保され次第、調査チームが現場に到着します。調査チームは、事故発生地の調査員、機体製造を行うボーイング社やエアバス社のある国の調査員、機体製造メーカー社員など多種多様な調査員が集まります。そこから、事故調査に必要なフライトデータレコーダー(FDR)、コックピットボイスレコーダー(CVR)、事故機の残骸などが収集されます。

3.初期調査

調査チームは、現場確認から集められた情報をもとに、事故の状況を詳細に記録し、それらの情報を分析します。その際には物的な証拠だけではなく、目撃証言、航空管制記録、事故機の整備記録、航空機に関する改善命令等も併せて収集されます。

4.証拠分析

収集された証拠(FDR、CVR、破片、関係者の証言など)が分析され、調査チームが立てた仮説をひとつひとつ検証していきます。具体的には、広く仮説を立てひとつひとつ潰していくケースが多いです。

5.事故調査報告の公表

調査チームは、事故の詳細と原因を報告書にまとめます。この報告書は、航空機の安全性を向上させるための提案を含むことがあります。

6.対策実施

調査の結果に基づいて、航空機の設計や運航プロセスに対する改善策が実施されます。重大事故への対策の場合、全機が運航停止となり、早急な対策を行う事例もありました。

これらの調査については、1年以上掛かることが多く、ニュースサイトのコメント欄には、「事故調査に時間がかかりすぎている」旨のコメントを見かけることがあります。しかし、事故調査において、分析誤りがあると再発防止策が全く効果を発揮せず、事故が再発する可能性を排除できません。そのため、慎重かつ確実に調査を行うことから時間がかかってしまいます。直近で発生したチェジュ航空機事故の調査結果も1年以上は掛かると推測しますが、この調査報告によって、空の安全への一助になることを願っています。