2022年8月付のCNNの記事にこのようなものがありました。

タイトル:The A380’s biggest supporter is asking Airbus to build a new super jumbo

和訳すると、【A380の最も大きなサポータはエアバスに対して新しいスーパージャンボの製造を求めている】となります。ここでの最も大きなサポーターはエミレーツ航空を指しており、CNNの記事ではエミレーツ航空CEOがインタビューに答えています。

https://edition.cnn.com/travel/article/emirates-boss-tim-clark-on-the-a380-and-why-we-need-a-new-super-jumbo/index.html

私自身、A380には何度も搭乗したことがあり、好きな機体の一つです。しかし、本日のテーマである、”A380neoは登場するのか”の問いに対する答えは【No】と考えます

その理由は以下3点です。

  • 使いこなしている航空会社はエミレーツ航空1社のみであること
  • A350やB777-Xといったより大型の双発機が登場したこと
  • COVID-19による経営悪化から抜け出せていないこと

まず、”使いこなしている航空会社はエミレーツ航空1社のみであること”についてですが、発注履歴ではエミレーツ航空が最も多い123機(全A380生産機数251機の約半数)であり、次に多いシンガポール航空は24機に留まることから、エミレーツ航空が飛びぬけて多い運航機数であることがわかります。

エミレーツ航空の経営手法は乗り継ぎ利用者をターゲットにした運航にあります。これは、アラブ首長国連邦(UAE)にあるドバイ国際空港を拠点とし、5大陸にある大都市とドバイをA380に代表される大型機で結び、中規模都市へと乗り継ぎをさせる手法です。多くの利用者を一度に運ぶことが運賃低減に貢献しており、直行便よりも安価な運賃で利用者にメリットをもたらしています。

しかし、多くの乗客を乗せられない航空会社にとっては、運航コストがかさむだけの機体となってしまいます。事実、COVID-19により海外渡航が自由にできなかった2020年当時はほぼすべてのA380が地上待機となっていました。これはエミレーツ航空も例外ではありません。一度に500名以上の乗客を運べるA380の路線すべてを満席にするのは容易ではありません。

ボーイング社HPより(B777-X)

次に、”A350やB777-Xといったより大型の双発機が登場したこと”についてですが、A380が初飛行を行ったのは2005年でした。それから約10年後の2013年にA350が初飛行、B777-Xは2020年に初飛行を行い、A380の登場から早15年以上が経過しています。発注機数から見て取れるように、各航空会社はA380ではなく、A350-1000やB777-9といった従来よりも更に大型の双発機を発注しています。A380の開発時期にはB777-300ERの姿が見え始めていましたが、やはり大型双発機に軍配が上がった状況から、今後も大型双発機が各航空会社のフラッグシップになると考えられます。

最後に、”COVID-19による経営悪化から抜け出せていないこと”についてですが、需要が急回復しているとされる海外航空会社ですが、主に近距離国際線や国内線が稼ぎ頭へと変化し、まだ長距離国際線の需要は復活していません。また、コロナ禍で人員整理や機材整理を行った傷跡はまだ癒えておらず、本来であれば再雇用を行うべき現在の需要回復期においても経営は慎重になっているようです。以下は日経新聞の記事ですが、国内主要航空会社のJALとANAにおいても売上はコロナ前の水準に戻っていません。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC022B00S2A200C2000000/

以下のIATA(国際航空運送協会)の需要予測においても、当面は新型コロナ流行前に描いた成長率には達しないと見ています。

www.plataine.comより(出典IATA)

新型コロナウイルスの感染再拡大によっては再びの経営危機が訪れる可能性もあり、航空会社の経営はより保守的にならざるを得ないと考えます。そうなると、A380neoのような新型の超大型機”スーパージャンボ”を購入できる会社はごく僅かであることは明らかです。

個人的にはA380は好きな機体であり、シンガポール航空のA380に乗った2008年の思い出は今でも忘れられません。機会があればぜひ再び搭乗したいのですが、エミレーツ航空以外の航空会社からは、”お荷物”と言われる日々が続いてしまうかもしれません。ANAのように特別な機体である証拠の”Flying Honu”のような愛称をつけ、路線を限定して飛ばすようなマーケティングが必要かもしれませんね。

筆者撮影@成田空港(2008年)
2 thoughts on “A380neoは登場するのか”

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