タイトルに対する結論は、”稀にある”となります。
2024年12月7日、JALがB777-300ER型機の置き換えとして発注したA350-1000型機の7機目が羽田空港に到着しました。この機体登録番号はJA08WJということで、もともとは8機目として導入を予定していた機種でした。しかしながら、”諸事情”によりJA07WJよりも前倒しにて納入されたことになります。JAL側はこの順番入れ替えについては、「エアバス社の旅客機組立スケジュールに変更が生じたため」と回答しています。
旅客機の発注から納入までのプロセス
旅客機を発注してから受領するまでの一般的な流れは以下の通りです。
- 発注: 航空会社がメーカー(例: ボーイングやエアバス)に機体を発注。
- 契約締結: 航空会社とメーカーが契約を交わし、価格、納期、仕様などを詳細に定めます。
- 設計および製造計画: メーカーが具体的な設計を確定し、製造計画を立てます。
- 製造開始: 必要な部品が調達され、製造が開始されます。小さなネジや金属部品が製造され、徐々に組み立てられ、大きな部品へと組み立てが行われていきます。
- 組立: いくつかの部品が組み合わせられ、大型部品の組み立てが行われます。これはメーカーの主要な組み立て工場で行われます。
- テストと検査: 完成した機体は厳格な地上および飛行テストを受けます。これには安全性、性能、信頼性の確認が含まれます。
- カスタマイゼーション: 航空会社の仕様に合わせて内部のカスタマイズが行われます(例: 座席設置など)。
- 認証取得: 必要な政府および航空当局からの認証を取得します。
- 受領前点検: 航空会社が機体を点検し、最終確認を行います。
- 引き渡し: すべての手続きが完了した後、正式に航空会社に引き渡されます。
- 就航準備: 航空会社は機体を本社または運航基地に移動し、就航前の準備を行います(例: 乗務員の訓練、機内設備の最終調整など)。
- 就航: すべての準備が整い次第、新しい機体は公式に商業運航を開始します。
これが順調に進めばよいのですが、実際のところはトラブルが発生することはあります。
部品に不具合があり組み立てを開始できない!?
例えば、上記プロセスの4.製造工程において、製造途中の品質検査において不具合が発生した場合、部品を再製作もしくは不具合の修正が行われます。しかし、工程が進めば進むほど、再製作する場合の時間の余裕がなくなり、最悪の事態ではボーイング社やエアバス社といった機体メーカーへの納入ができず、組立スケジュールが変更を余儀なくされることがあります。組立に着手できない場合、機体メーカーの組立作業者を休ませるわけにはいかないため、後々に組み立てる予定であった機体と先の組立機体を入れ替えて、組立を開始する場合があります。(JA07WJにおいて、組立上、トラブルが発生したのかは不明です)
他号機の部品を流用したらよいのでは!?
上記のご意見が出る場合がありますが、航空機部品の流用は簡単ではありません。なぜならば、部品一つ一つがトレーサビリティシステム(追跡システム)の管理下に置かれており、多数の部品を組立てしまったものを、他号機へ転用する場合、トレーサビリティシステムでの情報の変更の手間があります。この手間を含めて転用するか、それとも製造号機を入れ替えるかは、機体メーカーの判断となることが多いです。
納入前検査での航空会社側からのクレーム
上記プロセス9.受領前点検において、航空会社から受けたクレームへの対応により、納入が後ろ倒しになるケースがあります。例えば、組み立てられた機体の塗装に塗りムラがあったり、床のカーペットにシミがあったりと外観上の問題の場合があります。車と同じく、動作確認はもちろんのこと、見た目の綺麗さも重要なチェック項目となっています。
旅客機は発注後から受領まで長いサプライチェーン・プロセスによって成り立っており、現在は旅客機受注の急増により、サプライチェーンは混乱をきたしています。今後も今回のJAL A350-1000型機にて発生した納入順番の入れ替えは今後も起こりうると思われます。しかしながら、機体製造および受領前にしっかりと点検・チェックを受けていることから、利用者は安心して搭乗できそうです。