2024年10月現在、ボーイング社のシアトル工場の勤務者(労働組合員)が所属する労働組合と会社側との間で、賃上げ交渉が決裂し、シアトルにおいてはボーイング製旅客機の生産が滞っている状況です。具体的には、会社側は35パーセントの賃上げを組合側に提案したものの、組合員による投票の結果、否決されたとのことです。

賃上げ提案を労組が否決、ボーイングでスト長期化…「損失1日150億円」試算https://news.yahoo.co.jp/articles/e7984064aa87fc8ecea375f794a617a978c47db2

シアトルにある工場にて生産している機種は、B777、B767、B737である。尚、B787はチャールストン工場にて生産していることから、今回のストライキ影響は受けていない状況です。


ボーイングによるストライキ影響

ボーイングによる生産遅延の結果、エアライン各社は現在運航中の機体の退役延期を図っています。具体的には、B777-300ERを多数運行するエミレーツ航空やキャセイパシフィック航空では、元々はB777-X型機に搭載する予定だった新型シートの導入をB777-300ER型機に対して行っています。

出典:キャセイパシフィック航空Website

キャセイパシフィック航空はB777-X型機を21機発注し、現在運航中のB777-300ER型機の置き換えを行う計画ですが、当面はB777-300ER型機の使用を継続する見込みです。

出典:エミレーツ航空Website

日本のエアラインとしては、B777-300ER型機はANAとJALの2社が運航中ですが、JALはB777-X型機を発注せずにA350-1000型機への置き換えを着実に進めています。一方、ANAはB777-X型機を20機発注済みであり、当面はB777-300ER型機を使用し続ける必要があります。


エアバスでも納入遅延発生

ボーイングではストライキによる納入遅延、B777-X型機の開発遅れなど、新型旅客機の供給不足は起こっていますが、競合他社であるエアバスでも納入遅延は発生しています。

例えば、エミレーツ航空はA350-900型機を発注済みであり、2024年に路線投入を計画していましたが、機体受領の遅延により2025年への延期を発表しています。

出典:エミレーツ航空Website

A350型機の納入遅延について、直接的な影響はニュースにて報道されていませんが、受注残が膨れ上がっていることで、サプライチェーン上にて何かトラブルが起こるとすぐに納入遅延に繋がってしまっている可能性があります。

エミレーツ航空は世界最大の旅客機であるA380-800型機の後継機種の製造をエアバス社に対して再三提案していますが、A350型機などの受注残がますます膨れ上がる状況では、新型航空機の開発は後回しになると思われます。


エアライン各社は現在運航中の機体を長く使う必要が出ており、機体整備には苦労している状況かと思われますが、機体整備においてはJALやANAのお家芸と思われるため、日系エアラインにおいては安全な機体整備に努めて頂きたいと思います。