UAE(アラブ首長国連邦)を拠点とするエアラインのエミレーツ航空は、現地時間2024年11月27日、A350-900型機の初号機を受領しました。

Emirates Websiteより引用

エミレーツ航空とは?

エミレーツ航空Websiteより引用

エミレーツ航空は1985年3月25日に設立されたUAEを拠点とするエアラインです。現在では、6大陸150以上の都市に就航し、世界各地を結ぶ広大なネットワークを持っています。特に、ヨーロッパ、アジア、アフリカ路線に力を入れており、ドバイをハブとして世界中へアクセスしやすいのが特徴です。そして、一躍エミレーツ航空を世界トップクラスの規模へとのし上げた功労者は、A380型機とB777-300ER型機の大量導入です。特にA380型機は100機以上を保有し、世界各国からドバイへと旅客を輸送しています。このことから、エミレーツ航空は”ハブアンドスポーク方式”に力を入れているエアラインと言えます。


ハブアンドスポーク方式とは?

ハブアンドスポーク方式とは、物流や輸送において、中心となる拠点(ハブ)に全ての貨物を一旦集め、そこから各拠点(スポーク)へと振り分けて配送する方式のことです。

ハブアンドスポーク方式のメリット
①効率的な輸送:複数の就航地への旅客を一度にハブに集めることで、運航便の登場率向上やルートの最適化が可能になり、輸送効率が大幅に向上します。

②コスト削減:小規模の都市同士を結ぶ運行形態と比べ、搭乗率の改善、ひいては大型機での運行による一人当たり燃料費の削減につながり、エアラインにとってコスト削減に繋がります。

③迅速な乗継:ハブ空港で旅客が短時間で乗継を行うことで、各就航地への到着時間を短縮することができます。例えば、ロンドンには1日に複数回就航しており、各都市からドバイへ到着後速やかに乗り継げる体制となっています。

一方でデメリットも存在します。

ハブアンドスポーク方式のデメリット
①ハブ集中リスク:ハブ空港にトラブルが発生した場合、全てのネットワークに影響が出てしまう可能性があります。以前はドバイで大洪水が発生し、多くの乗客が数日間ドバイの空港から出られない事態となりました。

②初期投資:ハブ施設の建設や運営には、多額の初期投資が必要となります。巨大な空港を設ける必要があるためです。しかし、エミレーツ航空はドバイ政府が出資しているエアラインであり、空港運営とエアライン運営は一体であるとも言えます。豊富なオイルマネーによって、投資についてはあまり影響はないと思われます。

③高搭乗率の確保:ハブアンドスポーク方式を運営するには、大型機にて多くの乗客を集める必要があります。よって、A380型機を100機以上就航させていますが、いずれの路線も高い搭乗率を維持しなければ、運航コストを賄うことは難しい状況です。


エミレーツ航空は大型機頼み

エミレーツ航空Websiteより引用

エミレーツ航空の経営戦略としてハブアンドスポーク方式を採用していることから、大型機により大量の旅客をドバイへ運び続けることがエアラインとしての事業運営の生命線となります。よって、現在運航中のA380型機およびB777-300ER型機が運航できなくなった時、それはエミレーツ航空にとって危機的な状況であり、急所となります。

2024年時点で、A380型機の後継機種は発表されておらず、エアバス社に対してエミレーツ航空CEO自身が後継機種の必要性を訴え続けています。しかし、A380型機を必要とするエアラインはエミレーツ航空のみであり、現在A380型機を運行するエアライン各社はA380型機を持て余している状況であり、開発費を回収できるほどのオーダーが見込めないことから後継機種が開発される可能性は低い状況です。また、B777-300ER型機の後継機種であるB777-X型機の開発は遅延しており、現時点で就航目途は2026年となっています。しかし、ストライキや同じボーイング社の開発中機種であるB737MAX型機との開発リソースの振り分けなど、予断は許さない状況です。


エミレーツ航空の将来予想

Boeing Websiteより引用

エミレーツ航空向けのA380型機の最終号機が導入されたのは2021年12月でした。旅客機は20年程度使用される見通しですが、エミレーツ航空は機材の新しさを売りの一つとしており、使用されたとしても2030年代までと推測されます。そうなると、A380型機の後継機種が存在しないことから、ゆくゆくはB777-X型機がエミレーツ航空における最大旅客機となります。しかし、同型機は中東のエアラインはもちろんのこと、世界各国のエアラインが発注しており、旅客機のサイズではなく機数でキャパシティを確保する必要が出てきます。そうなると、客室乗務員やパイロットの確保において他社よりも高い給料を出し続ける必要があります。

現在、世界各国では脱炭素の流れが加速しており、今後、石油や天然ガスなどの化石燃料の使用量は減少し続けることが見込まれており、中東各国の存在感も低下する可能性があります。

そのような状況下で、機材のダウンサイジングによる1便当たりの収益性低下をどのように乗り切るかが注目かと思われます。