2024年12月19日、台湾のチャイナエアライン(中華航空)は、B777-9型機を10機、B777-8F型機を4機、A350-1000型機を10機の発注を行うことを、取締役会にて決定しました。チャイナエアラインは、現在、B777-300ER型機およびA350-900型機を運航しており、これらのシリーズに親和性・後継機種にあたるエアバスとボーイングの両メーカー製を発注することは自然な流れです。しかしながら、日本航空(JAL)のように、大型機はA350シリーズへ統合しているように、機種を統合することでのコストダウン効果を得られることから、2メーカーを1メーカーへそろえるエアラインもいることは事実です。そのため、今回、チャイナエアラインがなぜ2メーカーの機体を発注したのか、実際のところ、エアバス派?ボーイング派のどちらなのかを考察してみました。

チャイナエアラインHPより引用

1.政治的な思惑(対米・対欧州政策)

チャイナエアラインの本拠地となっている台湾・中華民国は、中国(中華人民共和国)と対立関係にあり、台湾を正式な国と認めている国家は少数派です。日本も台湾を正式な国家としては認めておらず、台湾に日本の大使館はありません。(大使館の代わりに、台北駐日経済文化代表処などの機関があります)

詳細はNHKのウェブサイトにわかりやすい記事が掲載されていました。https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/jiji/jiji135/

前述のとおり、台湾が正式な国家として認められておらず、昨今では中国が武力行使を行い台湾を侵略するのではないかとの憶測も飛び交うほど、両国間の緊張が強くなってきました。台湾の後ろ盾には米国があることから、軍事的な関係性の強化および再認識を狙い、台湾はボーイング製の旅客機を発注したのではないかとの推測が出ています。一方、米国一辺倒では、国際社会を味方につけるうえで完ぺきとは言えません。具体的には、米国大統領がトランプ氏となり、もし彼の意にそぐわないような事態となった場合、ボーイング製旅客機の発注などの実績が反故にされかねません。そのため、台湾ではバランスを保つうえで、A350-1000型機を発注した可能性もあります。(もっとも、B777型機は政治的、A350型機は経営層の意向かもしれません)

2.パイロット確保

スターラックス航空HPより引用

現在、台湾には大手エアラインが3社ひしめき合っています。チャイナエアライン、エバー航空、スターラックス航空です。エバー航空もB777-300ER型機の後継機種としてA350-1000型機を発注しており、スターラックス航空も最も大型の機材はA350-900型機とし、チャイナエアラインも既にA350-900型機を運航しており、3社ともにA350シリーズを運航しています。そうなると、世界的なパイロット不足の状況下で、A350シリーズの運航資格を持つパイロットは、台湾国内でも採用の奪い合い状況です。そのため、パイロット確保の観点から、B777-300ER型機の操縦資格者をそのままB777-X型機へ移行できるよう、B777-9型機およびB777-8F型機を発注した可能性があります。

3.コストダウン効果が大きくない

チャイナエアラインは、ボーイング社製旅客機とエアバス社製旅客機を多く運航しています。以下の表は、現在から今後のチャイナエアライン機材ラインナップです。斜め文字の機体が、今後追加となる新機材です。

機体サイズエアバス製ボーイング製
大型機A350-900型機
A350-1000型機が追加
B777-300ER型機
B777-9型機へ置換
B777-F型機
B777-8F型機へ置換
中型機A330-200型機
A330-300型機
B787-9型機を発注済
小型機A321neo型機B737-800型機

大型機については、エアバス社とボーイング社の両メーカーの新型機を導入することになりますが、小型機はエアバスへ置き換えることとなり、中型機はボーイングへ置き換えることになり、会社全体として各機体サイズごとにメーカーが混在している状況ではありません。そのため、大型機を統一しなくとも、あまり会社全体のラインナップが混沌とすることは無いと思われます。また、すでに類似機種を運航している場合、整備や運航管理上の制約も少ない場合があり、新規にて投資を行う領域が狭い場合は、合理的な機材選定と言えると思われます。


以上の状況から、今回のチャイナエアラインのB777-XシリーズおよびA350シリーズの発注は妥当な経営(公式には一切出ていませんが政治判断の可能性もあり)と思われます。そして、記事タイトルに記載のとおり、チャイナエアラインはボーイング派・エアバス派のどちらに属するのかと問われると、結論は、どちらにも属さないエアラインであると思われます。

いずれにしても、新機材が日本路線に就航しましたら、ぜひ搭乗してみたいものです。