ここ最近、羽田空港(東京国際空港、HND)の拡張計画に関する情報が次々に報道されています。理由としては、ウィズコロナ政策により海外からの旅客に対する水際対策が緩和され、旅行者が急増していることが一つ挙げられます。コロナ禍以前に計画されていた工事が再検討され始めたケースや発注再開となるケースなどさまざまですが、今後、羽田空港は更なる拡張フェースに入ることは確実と言えます。

そのため、今回の記事では今後、羽田空港がどのように変化するのか、各種プレスリリースを基に下記の通りまとめました。

  • 旅客ターミナルビル
  • アクセス鉄道(JR羽田空港アクセス線)
  • 新滑走路(5本目、E滑走路)
  • 羽田空港の拡張余地(筆者予想)

旅客ターミナルビル

現在、羽田空港には3つの旅客ターミナルビルが運用されています。主にJALグループの国内線が使用する第一旅客ターミナル、主にANAグループの国内線が使用する第二旅客ターミナル、主に国際線が使用する第三旅客ターミナルです。これら建設された年代はさまざまですが、2023年時点で就航便数の増加によりいずれも手狭感が出ています。よって、羽田空港旅客ターミナルを運営する日本空港ビルデング株式会社は2021年6月の株主総会にて下記の拡張計画を説明しています。

日本空港ビルデング(株)より引用

・第一旅客ターミナル:サテライトビル新設(新設時にターミナルビル本館と接続)

現存する旧管制塔付近の駐機場エリアにサテライトビルを新築します。2024年~2025年頃の利用開始見込みです。既に使用していない旧管制塔を取り壊すのかどうか注目しています。

・第二旅客ターミナル:サテライトビル拡張(既存のサテライトビルをターミナルビル本館と接続し、更に拡張)

現在、ターミナルビル本館とは繋がっておらず、バスによる移動が必要となっているサテライトビルですが、今回の工事によりターミナルビル本館と接続されます。また、接続部分は単なる通路ではなくボーディングブリッジが新設されることから、第一旅客ターミナルのサテライトビル新設と同様に利便性向上が期待されます。2024年~2025年頃の利用開始見込みです。

※第三旅客ターミナル:ビジネスジェット専用施設は2021年7月より運用開始済

https://www.anabj.co.jp/wp-content/themes/anabj/images/pdf/2021-10-22.pdf


アクセス鉄道

現在は京急線と東京モノレール線の2路線が羽田空港のそれぞれ3つのターミナルビルに直結しています。一方、首都圏に路線網を持つJR線は乗り入れていませんでした(※東京モノレールはJR東日本の子会社)。今後、羽田空港の利用者増加やアクセスの利便性向上のため、JR東日本は”羽田空港アクセス線(仮称)”の本格工事に着手しました。完成は2031年を予定しています。

https://www.jreast.co.jp/press/2023/20230404_ho03.pdf

JR東日本より抜粋

路線計画としては、東海道線に接続することから上野東京ライン(常磐線、高崎線、宇都宮線)の直通運転が想定されています。

注目すべき内容としては、終着駅の位置が挙げられます。

JR東日本より引用

工事計画では、新駅は第一旅客ターミナルと第二旅客ターミナルの間の地下区間に設置され、かつ第二旅客ターミナル側であることです。そして、期待されていた第三旅客ターミナルには接続していないことです。第一旅客ターミナルの利用者にとっては、第二旅客ターミナルの利用者より多少移動距離が延びることになりますが京急線同様の位置関係にあることから、負担感を大きく感じることは少ないと想定します。しかしながら、第三旅客ターミナルを利用する国際線利用者は、循環バスを利用して移動することになり、従来通りの京急線や東京モノレール線の利用が便利と想定されます。

JR東日本以外の新線としては、東急多摩川線の延伸構想が挙がっています。一方、線路幅などの問題により工事計画には至っていません。


新滑走路(5本目、E滑走路)

現在の羽田空港は4本の滑走路を有しています。それぞれAからDまでアルファベットが振られており、現在検討されている5本目の新滑走路はE滑走路と呼ばれています。新滑走路の計画はまだ構想段階につき、具体的にどこに設置するかは未定の状況です。下記画像は、国土交通省が主体となり、コロナ禍前に検討されていた位置です。

https://www.mlit.go.jp/common/001047128.pdf

国土交通省より引用

候補位置は①~④まで挙げられていますが、まだ工事着手の報道は出ていません。背景としては、成田国際空港における3本目の滑走路新設を優先したためと想定されます。コロナ禍前は羽田空港に第三旅客ターミナル(旧名称:国際線ターミナル)が開業したことで、成田空港から羽田空港への主要路線の移管が進みました。アフターコロナの現時点においては、成田空港ではなく羽田空港のみ路線再開したエアラインも多数あります。そのため、成田空港と羽田空港との共存・関係強化を図りたい国土交通省の思惑があると推測します。成田空港は3本目の滑走路新設に加えワンターミナル構想も出ており、再び活気が戻るのではないかと期待しています。


羽田空港の拡張余地(筆者予想)

今後、羽田空港は一層の利用客増加が見込まれています。しかし、羽田空港は海沿いに建設されていることから、現在新たにターミナルビルや滑走路を建設することは容易ではありません。そのため、今後は既存の空き地や老朽化した建物の建て替えにより新たな旅客施設を建設し、運用変更を行い利便性を上げることになると考えます。

①第一旅客ターミナルの一部国際化

ANAグループが使用する第二旅客ターミナルでは、南側の一部区画に国際線用施設を設け、運用できる体制を整えています。(コロナ禍により休止中。)同様にJALグループが使用する第一旅客ターミナルにおいても、サテライトビルの新設により国内線用のボーディングブリッジが増設された後、一部区画に国際線用の施設を設けるのではないかと想定しています。

②第四ターミナル(仮称)の新設

上記①の拡張工事が完了した時点で需要はカバーできると考えられますが、現在の想定を超える旅客需要が発生した場合、第四旅客ターミナルの話が挙がると想定されます。時期としては成田空港のワンターミナルの完成後と考えられます。その時の候補地として、筆者は下記2か所を想定しました。

①南側駐機場エリア

第二旅客ターミナルの近くのこのエリアは、現在JALやANA問わず、機体の駐機場として使用されています。選定理由としては、ある程度の広い土地を確保できることで、旅客ターミナルの新設が可能であることです。また、首都高にも近いことから、駐車場や道路の接続工事も他の候補地に比べて容易と考えます。更に大きなメリットして、東京モノレール線やJR羽田空港アクセス線の延伸によりターミナルビルへ直接路線を引き込むことができます。また、敷地の中央部に位置することから各滑走路への移動距離が最小限かつ横断回数も少なくて済みます。よって、ここが第一候補ではないかと考えます。

②北側駐機場エリア

現在は主にビジネスジェットの駐機場として使用されています。選定理由としては、国際線用に使用される第三旅客ターミナルと滑走路を挟み反対側に位置していることです。想定としては、既存の第三旅客ターミナルのサテライトとして、地下区間に新交通システムを建設・接続することで、チェックインエリア、ターンテーブル、入出国審査などの施設を供用化し、スペースの有効活用を図ることができると考えます。


羽田空港は都心へのアクセスが便利な位置にあることから、今後もますますの発展が期待されています。情報のアップデートがあればまた更新したいと思います。