2023年5月8日付にて新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類へ変更されます。その決定が出されて以降、旅行者が急増し空港は大混雑に見舞われています。特に保安検査場の混雑に関しては、SNSやニュースにて度々報道されています。

復活インバウンドに「混雑」が冷や水 空港の入国審査待ち1時間以上も

https://www.sankei.com/article/20230419-OWHIF73NRBPIJKAJSJTRSJCA34/

他にも、機体の貨物室へ預けた荷物がなかなかターンテーブルまで出てこないといった声も聞かれます。今後、飛行機を利用する旅行者がますます増える状況で空港スタッフの人手不足解消が急務でありつつも、人手不足である理由と解決できない根本課題を探りました。

人手不足の理由は下記の4点です。

  • ①賃金が安いこと
  • ②勤務地が遠いこと
  • ③重労働であること
  • ④人手不足が更なる人手不足を生み出すこと

①賃金が安いこと

一言に空港スタッフと言っても色々な業務により会社が異なります。例えば、カウンターにて旅行者対応を行う業務、手荷物検査を行う業務、預入荷物を運ぶ業務、機体を移動させる業務など多岐にわたります。そして、これらの業務は航空会社が自社で行わず、子会社や業務委託会社に依頼を行うケースがほとんどです。一般では、親会社よりも子会社の方が賃金が安く設定されるケースが多く、構造として空港スタッフが在籍する会社の賃金体系が安価に設定されています。

更に、新型コロナウイルス感染拡大により会社の経営が厳しいものとなり、空港スタッフの中には長期休業や退職した方もいらっしゃいました。その結果、現在は旅客が急増しているもののコロナ禍を抜けた直後の現在は賃金を挙げられないという経営状況もあります。

その結果、空港スタッフは募集人員が充足するほどの賃金上昇に至っておらず、現在も人手不足が続いている状況です。

参考までに下記は総務省が発表する有効求人倍率のグラフです。日本全体としてはリーマンショックが発生した2008年には0.5倍と大幅に落ち込んでおり”企業>応募者”の力関係でしたが、2022年は1.3倍であり”企業<応募者”の力関係であることから、賃金や労働環境の良い仕事に応募が集まる傾向にあることが想像されます。


②勤務地が遠いこと

首都圏において、主な空港である羽田空港と成田空港は都心からは鉄道・バスを使用し1時間程度掛かる状況です。また、住宅の多い都内西側や東側からは、更に所要時間が掛かるケースもあります。そのため、学生時代に住んでいた自宅のある場所から遠方にあることは採用面において不利になっています。

特に、正社員だけではなくアルバイト人員を採用するケースにおいては、遠方にあることは悪条件です。それは、Z世代は”タイパ(=タイムパフォーマンス)を重視しているためです。通勤時間は労働時間としてカウントされないため賃金は発生しません。例えば、3時間のシフト勤務に対し片道1時間の通勤時間のA社と片道10分のB社であれば、時間単価に換算するとB社の方が効率よく稼げるということになります。そのため、遠方にある職場は選択肢に入れてもらえないケースが増えています。

Yahoo乗換案内より引用。大学生が多く住む明大前駅→羽田空港までの所要時間。

③重労働であること

空港スタッフは重労働であると言われています。特に屋外にて勤務するスタッフは、暑い日も寒い日も屋外にて業務を行う必要があり、更に夏は強い日差しがあり、冬は強い北風が吹き荒れる日もあります。そのような天候に関わらず業務をし続ける必要のある職場は、アピールポイントにならず、マイナスポイントとして見られることになります。

また、羽田空港においては24時間空港の位置づけであることから、深夜早朝時間帯での離発着があります。そのため、夜勤や早朝勤務があることから、シフト制の勤務体系は応募の選択肢から外す人もいるかと思われます。

近年ではTikTokやYoutubeにて年齢に関わらずお金を稼ぐことができる時代となり、労働環境の良い職場にて働きたいと考える若者が増えている傾向は一層強まっています。


④人手不足が更なる人手不足を生み出すこと

空港スタッフだけに言えることではありませんが、求人を出しても応募が集まらない人手不足に陥っている会社・職場は、一層の人手不足を生み出してしまうケースがあります。

例えば、空港スタッフとして働くAさんが急なシフト変更を希望したいと考え上司に相談したところ、代わりの人を自分自身で見つけない限りはシフト変更を認めないと言い、Aさんの要望を突っぱねたとします。その時、Aさんは「こんな職場、辞めてやる」と思ってしまうことでしょう。その結果、他に賃金が高く、かつ職場環境の良い求人が見つかった場合は転職をしてしまうケースが考えられます。その結果、この職場は更に人手不足が進み、更なる退職者を生み出してしまうことが考えられます。

そのため、人手不足の解消には、どこかで負の連鎖を断ち切る必要があります。


筆者の考える解決策

私としては、人手不足の解消には賃上げが最も有効であると考えます。なぜなら、働き甲斐や職場環境の改善が難しい空港スタッフの特徴を踏まえると、改善できる範囲が賃金であるためです。もし賃金を今の1.5倍に増加させた場合、おそらく応募者は増えることでしょう。

国土交通省はコロナ禍を踏まえ、様々な支援を航空会社や空港会社に対して行っていますが、残念ながら空港スタッフの賃上げにはつながっていません。そのため、人手不足を自動化によって補おうと考えていますが、自動化が進んでいる職場なので採用が増える訳ではありません。そのため、賃上げについて空港会社は検討すべきと考えます。

https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001467196.pdf 国土交通省より

空港の混雑が緩和され、快適な空の旅が楽しめることを願っています。

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