久しぶりの本シリーズです。本日12月15日(2009年)はボーイング787型機が初飛行した日となります。
ボーイング787型機の特徴
日本の大手エアラインのJALおよびANA共に運航するB787型機は日本の国内線だけではなく、国際線でも大活躍している旅客機です。この機体は旧世代の機体(B767型機やB777型機)に比べると以下の点にて特徴があります。
- 高効率なエンジン: ボーイング787型機は、新型のジェットエンジン(GE製もしくはロールスロイス製)を採用しており、より少ない燃料で長距離を飛行することができます。これにより、航空会社は運航コストを削減でき、利用者にも価格のメリットがもたらされました。
- 設計の革新: ボーイング787型機は、従来の航空機に比べて多くの部分に複合材料を使用しており、これにより機体が軽量化されています。これが燃費向上の一因となっているだけでなく、機体の耐久性も向上しています。
- 運航範囲の広さ: ボーイング787型機は長距離の直行便を可能にする設計が施されており、旧世代の同型機(B767型機やA330型機)よりも長い航続距離を持っています。これにより、直行便の選択肢が増え、旅行者にとっての利便性が向上しました。また、エアラインにとって、ボーイング787導入以前はB777型機やB747型機といった大型機を用いなければ就航できなかった長距離国際線へB787型機という中型機を就航させることができ、少ない旅客数であっても路線の採算性を改善させることができています。
- 次世代客室インテリア: ボーイング787型機の客室デザインは、乗客の快適性を最大限に考慮しています。座席の配置やインテリアデザイン、そして機内の照明や窓の大きさなどが工夫されており、快適でリラックスできる空間が提供されています。窓の大きさは炭素繊維採用による副産物と言えそうです。
苦難続きの開発と就航
ボーイング787型機は上記に記載したように革新性を追求した新世代の旅客機であったことから、開発は非常に複雑で、多くの課題が伴いました。以下時系列でまとめました。
開発初期(2003年-2007年)
2003年: ボーイング787の開発が正式に発表されました。787はボーイングの次世代旅客機として、軽量な複合材料の広範な使用によって燃費向上を図ることが目標とされました。
2004年-2005年: 開発初期には、ボーイングは設計作業を開始しました。この時期、航空会社からの受注が増加し、高効率の機体を求める航空会社からの需要が高さをうかがい知ることができます。一方、最初の問題は、使用率を増やした複合材料の製造に関連するものでした。
2006年: 初期型の生産開始に向け部品生産が進む一方、サプライチェーンの課題が顕在化し、開発スケジュールに遅れが生じ始めました。サプライヤーが新しい素材や製造技術の量産化に時間が必要だったためです。
技術的困難と遅延(2007年-2010年)
2007年: 同年に初飛行が予定されていたものの、製造上の問題や混乱により再三延期されました。この年の7月には、787のロールアウト(公開)が行われましたが、実際の初飛行は10月に予定されていました。しかし、10月にも初飛行は実現せず、さらなる遅延が発生しました。当時、お披露目のためだけに機体を突貫で組み立て、式典後に再びばらしたということが報道され、大きな話題(問題)となりました。
2008年: 初飛行が再び延期され、プログラム全体の遅延が懸念されるようになりました。この年、ボーイングは供給チェーンの問題に対処するため、内部での製造プロセスを強化しました。特に、複合材料の品質管理や組み立て工程の改善に注力しました。
2009年: ついに12月15日に初飛行が実現しました。この成功は、ボーイングとそのサプライヤーが直面していた多くの課題を乗り越えた証となりました。初飛行後、厳しいテストプログラムが開始され、飛行特性、燃費性能、安全性などの確認が行われました。
2010年: テストプログラムが進む中で、エンジンと電気システムに関する問題がありました。これにより、商業運航の開始が再び延期されました。また、FAA(連邦航空局)および他の航空当局からの認証プロセスも新たな技術に対しての評価方法が確立されておらず、時間がかかりました。
商業運航開始と初期の課題(2011年-2013年)
2011年: 9月にANAに初めてのボーイング787が引き渡されました。これはボーイングにとって大きなマイルストーンとなりました。10月26日にはANAが初の商業運航を開始し、東京-香港間のフライトが実現しました。しかし、この段階でもいくつかの技術的な問題が残っており、特にバッテリー関連のトラブルが報告されました。
2012年: ボーイングは引き続き、787の生産を加速しつつ、技術的な問題に対処しました。この年、787は多くの航空会社に引き渡され、世界中で運航されるようになりました。しかし、バッテリーシステムの問題は依然として深刻であり、いくつかの飛行がキャンセルされたり、遅延したりしました。
2013年: 1月、ボーイング787のバッテリーから発火する事故が発生し、ANAにおいては緊急着陸後に乗員乗客が緊急脱出することとなりました。その後、全世界で787の運航が一時停止され、FAAはバッテリーシステムの見直しと改良をボーイングに命じました。その結果、バッテリーシステムの設計変更を行い、4月にはFAAが修正されたバッテリーシステムを承認し、5月には運航が再開されました。
安定期と新たな挑戦(2014年以降)
2014年以降: ボーイング787の生産と引き渡しは順調に進み、世界中の航空会社から高評価を受けるようになりました。燃費の良さや快適なキャビン環境が乗客からも好評でした。
まとめ
ボーイング787の開発は多くの困難を伴いましたが、それらを乗り越えた結果、航空業界において革新的な航空機として認知され、様々な出来事により窮地に立たされた航空業界を経済性の観点で救った立役者となりました。ボーイング787は世界中で広く運航されており、航空会社および乗客から高い評価を受け続けています。また、ボーイング787の技術は、ボーイング777-XやエアバスA350にも生かされています。私自身も、ボーイング787は好きな機体の一つであり、今後も安全な機体として国内外のエアラインを支えてもらいたいと思います。