先日Twitterを見ていると、【チャイナエアライン A330後継機にB787選定!】というニュースが飛び込んできました。同じ航空機メーカーから後継機種が販売されている場合、その後継機種を選定することが一般的です。その理由として、パイロット教育や機体整備に掛かるリソースをそのまま活かせるからです。しかし、JALが大型機をB777シリーズからA350シリーズに置き換える事例のように、会社方針によっては異例のことが発生します。今回はチャイナエアラインがA330の後継機にB787を選定した理由について解説します。
選定した理由は以下が考えられます。
- B787以外、欲しいボーイング機が無いこと
- A330neoよりも貨物コンテナを多く積めること
- 対中国政策としてアメリカとの繋がりを持ちたいこと
まず、”B787以外、欲しいボーイング機が無いこと”について説明します。チャイナエアラインは今後の機体戦略はほぼエアバス機になる可能性があります。以下の表は現行と今後の機材を整理したものです。
現行機種 | 後継機種 | |
大型機 | B777-300ER | A350-900(A350-1000も追加?) |
中型機 | A330-300 | B787-9 ←今回発注 |
小型機 | B737-800 | A321neo(A320neoも追加?) |
表を見て分かるように、既に大型機と小型機はエアバス機が導入され始めており、ボーイングが食い込む余地として残されていたのは中型機しかなかった状況です。チャイナエアラインにとっても、大型機においてB777-9は大きすぎることや、小型機においてB737MAXは就航地となる日本や中国において墜落事故のニュースが何度も報道されていたことから風評被害を懸念して発注に踏み切れない状況があると推測されます。
続いて、”A330neoよりも貨物コンテナを多く積めること”について説明します。2020年から世界各地に拡大した新型コロナウイルスにより旅客需要は激減した一方、貨物需要は旺盛です。そのため、新機材選定において貨物積載量を重視したと報道されています。具体的な数値を基にA330neo(-900)とB787-9を比較した表が下記となります。
機種 | LD3コンテナ |
B787-9 | 36個 |
A330-900(A330neo) | 33個 |
B777-200 | 32個 |
入国停止(ロックダウン)による旅客需要の変動に対して、需要が安定する航空貨物を取りこぼさないように、貨物の搭載量を重視した戦略は昨今のコロナ禍を反映したものと言えます。また、チャイナエアラインはB747-400FやB777-Fといった貨物専用機を運行するエアラインでもあります。そのため、会社方針として貨物需要を重視した戦略が旅客機選定にも表れています。
最後に、”対中国政策としてアメリカとの繋がりを持ちたいこと”について説明します。2022年現在、アメリカのペロシ下院議長が8月に台湾を訪問して以降、台湾を挟んで中国とアメリカのにらみ合いが激しさを増しています。台湾はアメリカとの結びつきが強いことから、中国が台湾に対して強硬策を出してきた時に備えて一層アメリカとの結びつきを強めようと、今回の航空機購入に至ったとの説もあります。
いずれにしても、新機材の搭乗が待ち遠しい一方で、新型コロナウイルスや米中対立といった海外渡航には懸念事項がいくつもあり、以前のように国際線に気軽に乗ることは難しくなってしまった社会に寂しさを覚えます。