本日9月2日はB717が初飛行した日となります。(1998年9月2日)
B717という機体は日本路線に就航したことのない機体であることから、実際に搭乗したことのある人は少ないかと思われます。生産機数は156機という少数であったことから、決して成功した機体とは言えません。そんな珍しいB717がどのような機体なのか説明します。ポイントは以下の3点です。
- T字型尾翼
- 開発途中で機体名称が変更される
- 競合機種は同じボーイング社内にアリ
まず、”T字型尾翼”について説明します。2022年時点で日本国内のエアラインが運航する機体のほとんどは、主翼の下にエンジンを取り付けたタイプです。一方で、IBEXエアラインズが運航するCRJ700はB717同様にT字型尾翼を持つ機体となります。このT字型尾翼のメリットは、主翼から発生する空気の乱れに水平尾翼が影響を受けにくくするためです。一方で、水平尾翼が地表から大きく離れることで点検作業が一層難しくなることはデメリットと言えます。同様のデメリットとして、3発のジェットエンジンを備えるDC-10も垂直尾翼にエンジン1基を配置していたことで、整備性の悪さが指摘されていました。
以上の理由により、最近ではT字型尾翼を備えた新型機は見られなくなっています。
続いて、”開発途中で機体名称が変更される”について説明します。1995年10月にMD-95の正式開発が決定されましたが、1997年8月にマクドネル・ダグラスがボーイングに吸収合併されます。そのため、マクドネル・ダグラスの頭文字である”MD”は使用できず、ボーイングの頭文字である”B”から始まる機体名称に変更されました。B717の”1”は、100席級の旅客機ということを意味しています。
最後に、”競合機種は同じボーイング社内にアリ”について説明します。ボーイングでは100席級の旅客機選定としてB737シリーズを既に持っていました。また、B717を開発していた頃、既にB737-600をラインナップしており、MD-95(=B717-200)を発注していたエアラインに対し、B737-600への発注変更を打診していたと言われています。しかし、B717を発注したエアラインは過去DC-9シリーズを運行していたことで、パイロットや整備のリソースを活かしたいと考え、B737への発注変更には応じませんでした。その結果、B717は最小限の予算にて開発が行われました。
この状況は昨今のA220とA320シリーズと似ているかもしれません。同じサイズの機体が航空機メーカー内で競合しているのであれば、売れ筋を残すのは自然な流れです。
筆者が当時搭乗した機体は2022年時点でまだ運行中のようです。しかし、今後はA220などの新型機に置き換えられるかもしれません。この機体の誕生は波乱万丈だったことが伺い知れましたが、日本人に人気のハワイの空を引き続き、元気に飛び続けてもらいたいものです。