2022年後半から現在まで、海外エアラインが相次いで機内リニューアルを発表しています。

  • フィンエア
  • クウェート航空
  • ルフトハンザドイツ航空
  • スイス航空
  • カンタス航空
  • エールフランス

そして、日本国内では日本航空(以下、JAL)が2023年後半に就航を予定しているA350-1000型機に搭載するキャビンの発表を航空ファンは首を長くして待っている状況です。

エアライン各社は新型コロナウイルスにより国内線・国際線を問わず運休に追い込まれ、人員や機材整理を行った会社も多数存在しました。その影響が今なお続く今、なぜエアライン各社は機内リニューアルを相次いで発表しているのか?背景を分析してみました。

ポイントは以下の3点です。順番に解説します。

①老朽化した座席を置き換えるため

②回復しつつある旅行需要の獲得のため

③航空機シートメーカー間で繰り広げる開発競争


1.老朽化した座席を置き換えるため

新型コロナウイルスの感染拡大前はエアラインの中には座席リニューアルを既にアナウンスしていた会社がありました。例えばANAです。ANAは東京オリンピック開催および羽田空港第2ターミナルの国内・国際併用に合わせて国際線機材を拡充していました。特にB777-300ER型機は20機以上を運行し、機内は”THE SUITE”と”THE ROOM”を発表し、欧米路線へ就航させていました。

ANA HPより

しかし、新型コロナウイルス感染拡大により不要不急の設備投資を抑制しキャッシュアウトを抑えるために、複数の機材を売却しました。特に国際線用のB777-300ER型機は国内線にて運行するには全幅などのサイズが大きすぎるため、機齢が10年程度のものも退役となりました。また、A380型機の3号機は2023年3月時点においてもまだ就航しておりません。

国際線機材の中にはリニューアルを先延ばししたことで、他社に対して見劣りする座席が出ていることから、旅行者の需要回復に合わせて老朽化した座席を置き換える狙いがあります。

ANA HPより(一部の旅行者の間では、スタッガード型ではなくクレードル型に機材変更になると厳しい意見が寄せられている)

2.回復しつつある旅行需要の獲得のため

先のトピックにも関連するのですが、コロナ禍において旅行需要は上級旅行者から回復し始めました。エコノミークラスは空席が目立つ一方、ビジネスクラスは搭乗率が上々であったようです。そのため、エアライン各社は需要に合わせ、ファーストクラスを搭載した機体を真っ先に長期保管から復帰させたり、割安運賃ではなく安心安全を全面にした上級クラスの販売に力を入れたりしました。

2023年春時点では、国内・国際線問わず需要が回復しており、エコノミークラスにおいても満席になる便が続出しており、更なる需要喚起や価格が横並びになる中で自社を選んでもらうために機内リニューアルに力を入れるエアラインも増えてくると予想します。

ここで注目しているのはオーストラリアのフラッグキャリアであるカンタス航空です。

同社はイギリスとオーストラリアの間にて長きにわたり航空便を運行しています。この路線はカンガルールートと呼ばれ、A380型機にて運行されるほどの高需要路線です。以前はシンガポール・チャンギ国際空港を経由していましたが、現在はUAE・ドバイ国際空港を経由して運行されています。

しかし、乗客の多くは早く目的地に到着したいと考えていることから、同社は”プロジェクト・サンライズ”を立ち上げ、2022年にA350-1000型機を選定しました。そして、2023年2月、この特別な機内イメージを公開しました。一番の注目はファーストクラスです。座席とベッドがそれぞれ独立しており、長時間のフライトにおいても快適に過ごせることは確約されるでしょう。

カンタス航空 HPより。

3.航空機シートメーカー間で繰り広げる開発競争

コロナ禍においては、資金繰りの厳しいエアライン各社の要請に可能な範囲で応えるべく、減産を行う機体メーカーがありました。機体の引き渡しが遅れることは、機内に搭載する座席の納品も併せて遅れることになります。そのため、我慢の年が続いていました。しかし、先の2つのトピックスにて記載したように、エアライン各社は機内リニューアル計画を相次いで発表しており、それは航空機に搭載するシートメーカーがエアラインに対しての提案を増やしていると推測します。背景としては、コロナ禍の2010年代において、航空機シートメーカーの買収や合併により会社規模を拡大し、部品やデザインの共通化が進みました。また、最近ではエアラインオリジナルの座席ではなく、シートメーカーのラインナップを採用するケースが増えています。

資金繰りに厳しいエアラインにとって、独自の座席開発の資金面での余裕はない一方、座席の更新時期に差し掛かっているこのタイミングにて、航空機シートメーカーによる売り込み提案が増えていると推測します。航空機シートメーカーにとっても顧客を獲得できなければ売り上げが立たず、他社との合併や買収提案を受け入れることになることから、現在、各社必死の開発競争が繰り広げられています。


以上、なぜ今、エアライン各社が座席をリニューアルするのか?について解説しました。

筆者としては、2023年に就航が予定されているJAL A350-1000型機の機内がとても気になっています。先のトピック3にて述べたように、JALの座席が独自のものになるのか、それとも航空機シートメーカーのカタログ品になるのか含め、楽しみにプレスリリースを待ちたいと思います。

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