2023年10月02日付のプレスリリースにて発表されたA350-1000型機に搭載するファーストクラスのシートですが、現行機材のB777-300ER型機の8席に対し、A350-1000型機は6席となりました。極端な話となりますが、ビジネスクラスの豪華化に伴いファーストクラスとの設備面での差が小さくなっている状況やファーストクラスの発表タイミングなど様々な事情を分析し、なぜ6席仕様のファーストクラスとなったのかを推測します。


ポイントは以下の3点です。

  • 奥行き空間の適正化
  • 横幅の適正化
  • 需要の適正化

奥行き空間の適正化

ファーストクラスは旅客機の先頭部分に設けられることが多いです。この理由はいくつかあり、①騒音元となるエンジンから離れていること、②(乗降時を除き)乗客の行き来が限られること、が挙げられます。JALの新型ファーストクラスの空間については、中央の荷物棚を設置せず、広い空間を売りの一つとしています。そのため、ファーストクラスにおいては座席の広さだけではなく、ファーストクラスセクションの空間の広さを演出することもデザイン上、重要であったと考えられます。

今回の新型ファーストクラスは2列設置されることになりましたが、もし1列であった場合、この空間の広さを演出することはできたでしょうか?おそらく困難であったでしょう。根拠はマレーシア航空およびスターラックス航空のファーストクラス(マレーシア航空はファーストクラスを廃止しビジネススイートへ名称変更)の配置および各種レビューを参考にしました。

JAL A350-1000型機のシートマップ(出典:JALウェブサイト)

例えば、マレーシア航空ではA350-900型機に旧ファーストクラスを1列配置していますが、ビジネスクラスとの間にパーテーションを設置していることで、奥行きがない空間となってしまっています。(各種搭乗レビュー参照)

マレーシア航空 A350-900型機のシートマップ(出典:マレーシア航空ウェブサイト)

一方、スターラックス航空は同じくA350-900型機にファーストクラスを1列配置していますが、ビジネスクラスとのパーテーションをあえて設置せず、ビジネスクラスの空間を生かし、奥行きのある空間を創り出しました。

スターラックス航空 A350-900型機のシートマップ(出典:スターラックス航空ウェブサイト)

A350-1000型機はA350-900型機に比べて全長約6mを延長しています。その分、各キャビンの自由度が高まっており、奥行きのある空間演出を行う上で、2列配置が適切と判断したのではないかと推測します。


横幅の適正化

ファーストクラスの個室化は昨今のトレンドであり、扉付きの座席は標準になりつつあります。一方、個室化に伴い、座席同士の壁も高くなり、隣人と隣り合う座席であってもパーテーションがあれば気にならない状況になりました。そのため、これまでのファーストクラスでは扉付きの座席が、1-2-1の4席並ぶことが多い状況です。先に述べたマレーシア航空の旧ファーストクラス、スターラックス航空、ANAがB777-300ER型機やA380型機に搭載する”THE SUITE”、JALと同じワンワールド加盟のブリティッシュエアウェイズも同じく1-2-1の1列あたり4席となります。

ANA B777-300ER型機のシートマップ(出典:ANAウェブサイト)
ブリティッシュエアウェイズ B787-10型機のシートマップ(出典:BAウェブサイト)

しかしながら、今回JALが発表した座席は1-1-1の1列あたり3席となりました。ファーストクラスにおいて、現時点で同じ座席配置を採用しているエアラインはありません。(ファーストクラスを超えるスイートクラスにおいては、シンガポール航空およびエティハド航空が1-1の2列配置としています)

今後については、2025年を目途にカンタス航空がオーストラリアと欧州および北米を結ぶ路線に投入するA350-1000型機の航続距離延長モデルに、JALと同じ座席配置のファーストクラスを導入することを発表しています。

カンタス航空 A350-1000型機(出典:カンタス航空ウェブサイト)

需要の適正化

現在の航空業界はコロナ禍による苦難を乗り越え、旅客数はコロナ前を越えている地域が多くなっています。日本国内においても、歴史的な円安により海外からの旅行者が急増しています。一方、日本から海外への旅行者は伸び悩みを見せています。海外出張も同様であり、ウェブ会議の定着により仕事で海外へ渡航する機会はコロナ前には至っていないとのJALやANAのCEOコメントがあります。

一方、近年はファーストクラスを廃止するエアラインが増えている影響で、ファーストクラスの座席を搭載した機材にて運行される路線が限られています。そのため、逆にファーストクラスのある路線に乗客が集まり、8席が満席になることはしばしば発生しているようです(旅行会社談)。当初、筆者は現在のJAL SUITEの合計8席よりも少ない4席を筆者自身、予想しておりました。しかしながら、実際には1-1-1の2列仕様の合計6席仕様となり、現在の8席から4席減ではなく2席減に留まっています。JALとしては、一定数の需要を満たすために、座席の減少数を最小限にしたかったのではないかと推測します。


私自身、JALのA350-1000型機の登場を楽しみに待っているところです。自費で乗ることは難しいため、いつかマイルを使って乗れないかと思う日々です。まずは有名なYouTuberさんの搭乗Vlogを楽しみにしたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です