昨今、B777シリーズにおいてプラットアンドホイットニー製(PW製)エンジンを搭載する機体の運行再開が増えています。
そもそも運航停止になった理由は、エンジン内部のファンブレードの金属疲労を検査するプロセスが不十分であったことが起因したエンジントラブルが発生したことです。2021年にユナイテッド航空が運行するB777-200型にてファンブレードが破断し、破片がエンジンカウルを突き破り胴体に損傷を与えました。また、JALが運行するB777-200型においても類似の事故が2020年12月に発生していました。そのため、アメリカ連邦航空局(FAA)は緊急耐空性指令(EAD)を発行し、各国にて運行される同型機が緊急点検のため運航停止されることとなりました。その後、ボーイングがプラットアンドホイットニーと共に改修内容を発表し、順次対策が施されることとなりました。そのため、B777型にて運航が再開されたPW製エンジン搭載機は更に安全な機体となっています。
本題に戻ると、今回のPW製エンジントラブルをきっかけにJALはB777-300型を全4機退役させることにしました(もともとは2022年に退役予定)。そのため、日本国内にて同型を運行するエアラインはANAのみであり、全5機を保有しています。一方で、B777-300型は1996年10月6日に初号機が初飛行を行い、それから約26年が経過しています。よって、ANAが運行するB777-300型においても機歴が約24年を経過し、ANAが運行する旅客機の中でも最も古いシリーズとなります。
今回のテーマは、なぜB777-300型が長く運用されているのか?を分析し、いつまでこの機体が使用され続けるのかを予想してみました。
なぜB777-300型が20年を超えて運用されているのか?
大きな理由として、ANAのニーズにマッチした後継機種が無いことが挙げられます。以下の表はB777型(第1世代)の後継機種一覧です。航続距離と客室数を基準に作成しています。
B777シリーズ第一世代 (カッコ内は標準乗客数) | 後継機種 (カッコ内は標準乗客数) | 現行機種と後継機種との 差異 |
200型 (国内線405人) | B787-9型 (国内線395人), -10型 (国内線450人と想定) | ほぼ無し |
200ER型 (国内線405人) | B787-9型 (国内線395人), -10型 (国内線450人と想定) | ほぼ無し |
200LR型 (国際線3クラス290人) | B777-8型 (未定) | ほぼ無し |
300型 (国内線514人) | B787-10型? B777-300ER型? | ・B777-300型に対しB787-10型より 50人ほど乗客が減少見込【×】 ・B777-300型に対しB777-300ER型は 翼幅が約4m長い【×】 |
300ER型 (国際線4クラス264人) | B777-9型 (未定) | ほぼ無し |
(参考)F型 貨物機 | 8F型 貨物機 | 未定 |
B777-300型に近い仕様を持つ機体として、B787-10型とB777-300ER型が存在しますが、B787-10型は客席数がB777-300型を大きく50席ほど下回ると予想され、B777-300ER型は客席数では胴体長が同じことから有力ですが、長距離向けにウイングレットを掉尾していることから翼幅が4m長くなっています。B777-300型とB777-300ER型は同じコードEに該当する一方で、この4mの違いが今日まで羽田発着の国内線にB777-300ER型が投入されることはなかった理由の一つと推測されます。B747-400型にてウイングレットを取り外す-400D型への改造のようにB777-300ER型でも同様の改造を施すことが出来る場合、B777-300ER型が後継機種になり得ると考えますが、近年ではウイングレットが翼と一体形状になりつつある中で、外す改造をボーイングが検討する可能性は限りなく低いです。
理想としては、後継機種の就航に伴いB777-300型を置き換えるのが過去の事例でしたが、今回はそのパターンが実現することはなさそうです。そのため、使用できる飛行回数や機体寿命まで使い続けるしかない状況です。しかし、いつまでもこの機体を使い続けることはできません。そのため、ANAは2020年にB787-10を後継機種として選定し、発注しています。
https://www.anahd.co.jp/group/pr/202002/20200225-3.html
ANA B777-300型はいつまで使用され続けるのか?
筆者予想では2025年にB777-300型が退役すると予想しています。その理由としては、B787型のエアラインへの引渡しが1年以上遅延しており、ANAへのB787-10型の引渡しが遅延し、当初予定の2024年までの置き換えが後ろ倒しとなり、2025年になると予想します。
2025年までは新千歳空港、那覇空港といった観光需要の大きい路線に就航し、退役までの勤めを果たすと考えます。
B777-300型はANAが運行するA380型”フライングホヌ”を除くと国内最大の座席数514席となりますが、今後これを超える大型機が国内線に投入されることは無いと考えられます。そのため、一つの時代の移り変わりを感じます。
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