国内線ではよく見かけるB737-800型。大手エアラインのJAL、ANA共に数十機を運行し、その他エアラインでも運行されている機種です。特にJALはB737-800を45機保有し、グループ会社である日本トランスオーシャン航空においても13機保有し、同エアライン内ではB737型が最も多い機体数となっています。この理由としては、使い勝手の良さが挙げられます。B737-800型は地方路線だけではなく、早朝や深夜帯の幹線路線、台北に代表される近距離国際線といった幅広い路線に就航し、使いやすい機種となっています。
しかし、B737-800型のB737NG(=Next Generation)シリーズは既にB737MAXシリーズが後継機種として登場していることから生産は終了しており、ANAはB737-8(MAX)型を20機確定発注済みです。
ANAプレスリリース(B737MAX購入)
https://www.anahd.co.jp/group/pr/202207/20220711.html
また、ANAはA320neo型を4機、A321neo型を22機運行しており、既にB737-800型の後継機種選定は終わっているように見受けられます。しかし、JALにおいてはまだB737-800型の後継機種について何ら動きはありません。
そこで、今回はJALが後継機種をいつ発注するのか?そして、機種は何になるのかを予想してみました。
Q:後継機種はいつ発注する?
A:早ければ2023年、遅くとも2024年には発注すると予想します。
その根拠は3点あります。
①B737-800型のJAL初導入から2027年にて20年が経過すること
JALプレスリリース B737-800型導入
https://press.jal.co.jp/ja/release/200611/000340.html
利用者の間では、20年を経過した機体というのは経年機と呼ばれ始め、搭乗すると新型機に比べて内壁や照明が色あせていたり、退役を思わせるようにシートが交換されていなかったりと、古いと感じる要素が増えてきます。ANAもJALも後継機種が見当たらないレアケースを除いて、20年を目途に新しい機体に置き換えています。そのため、B737-800型もそろそろ置き換えを検討しなければならない目安となる20年が目前に迫っています。
②B737MAXシリーズ・A320neoシリーズ共に発注から納入まで最短3年程度掛かること
両シリーズ共に大手エアラインからLCCまで世界各国で運行されている機体になります。新型コロナウイルスの感染拡大により大型機の需要はA380やB777-300ERを中心に激減しましたが、小型機は底堅い需要により砂漠で長期保管されるケースは少なかったようです。そのため、アフターコロナを見据えて世界各国で航空旅客需要が回復している状況下にて、これら小型機の需要も回復してくると見込まれます。現時点での受注残は以下の通りです。
機種名 | 受注残 | 年間生産 |
B737MAXシリーズ | 4,573機 | 250機 |
A320neo型 | 2,778機 | 260機 |
A321neo型 | 3,581機 | 220機 |
受注残を生産機数にて割ることで受注待ちの解消に何年掛かるか計算できますが、既に3年を超える数字になっています。一方、大手エアラインからの初受注であれば機体メーカー側の生産調整により多少の割り込みはあり得ると考えられます。
③B737-10(MAX)型のFAA承認の可否を見極める
B737MAXシリーズの中でもっとも大型の機体がB737-10型となります。この機体はデルタ航空やユナイテッド航空から既に発注がされておりますが、まだFAA承認待ちの状況です。しかし、過去、2度発生したB737MAXシリーズの墜落事故により、FAAとボーイングの間にて、パイロットへ航空機器の異常を知らせるシステムの搭載を巡って駆け引きが続いています。このやりとりの期限は2022年12月となっており、これを過ぎるとボーイングはB737-10へ新たなシステムを搭載せざるを得なくなり、乗員への追加訓練や機体改修といった費用が発生することから、最悪開発中止を匂わせています。このB737-10型はA321neoの対抗機種であり、B737MAXシリーズを運行する上での1機種になり得る機体につき、JALは動向を見守っていると推測されます。
以上①②③より、発注は早いに越したことはない一方で、昨今の新型コロナウイルスの感染状況を見極め、来年に発注と予想しました。
そのうえで、JALがどの機種を選定するかについて推測します。
A:筆者はA320neo/A321neoを発注すると予想します。
その理由は2点あります
①エアバス機への統一による各種コストの圧縮
JALは2010年、2兆3,000億円もの負債を抱え、会社更生法の適用を申請しました。これにより、JALとJAS統合により増えすぎてしまった機種・機体数削減にも着手しました。その結果、現在では大型機はB777シリーズ、A350-900型、中型機はB787シリーズ、B767-300ER型、小型機はB737-800型に集約しています。今後は大型機のB777シリーズを退役させA350シリーズに統合する予定であり、より機種の統一化が進む見込みです。そのため、小型機においても、大型機もしくは中型機との共通性のある機種を導入することが、現在のJALにとっては自然な流れであると考えられます。
エアバスにおいては相互乗員資格(CCQ=Cross Crew Qualification)という考え方に基づいて設計されており、パイロットはA350とA320のサイズの異なる機種であっても2週間程度の短期訓練を経て移行することができます。。これにより、新型コロナウイルスによる需要の急変に対して機体を需要に合わせて変更し、パイロットも柔軟に配置することができるようになります。
一方で、問題点もあります。エアバスA320neo/A321neo型の導入に伴いB737-800型を操縦するパイロットは、B737MAXシリーズであれば容易に移行できた一方、エアバス機の乗務のために訓練を受け直す必要があります。そのため、労働組合とJALの間ではさまざまな調整が行われていると推測されます。この点が解消されると、A320シリーズの導入実現に近づくと思われます。
②B767後継機種問題
別の記事にてB767シリーズの後継機種がボーイングから発表されていないことを記載しました。
ANAはA321neo型をB767-300型の後継機種候補として、幹線から地方路線まで幅広く使用しています。そのため、JALも同じ戦略を執るのではないかと考えます。先程述べた機種統一化についても、中型機のB787シリーズに対してB767シリーズを退役させA321neo型を当てはめることで、小型機のA320neo型との共通性を出すことができます。
ボーイングの現状ではB767シリーズの後継機種を開発する余裕がないことから、A321neo型の導入はJALにとってもANA同様に有効な一手と考えられます。
まとめ
筆者予想:JALはA321neo型、A320neo型を2023年~2024年に発注するのではないか。