A330neoはA330ceoの後継機種として開発された機体です。A330ceoは1992年に初飛行し、A330−300型と航続距離を伸ばすために胴体長を短縮したA330−200型の2タイプにて構成されます。2022年現在では初飛行から30年が経過しており、現在の生産はA330neoに移行しています。しかし、A330neoはA330ceoほど受注を伸ばすことはできていません。受注数で見ると、A330ceoシリーズは1486機の受注をしましたが、A330neoシリーズは361機に留まっています。もちろん、A330neoは販売が開始されてまだ日が浅いため、今後の受注機数を伸ばすことがあるかもしれませんが、新型旅客機の場合はローンチカスタマーが大量発注を行うことが過去幾度とありましたが、A330neoシリーズは大型受注はできていません。

今回はA330neoが売れていない理由について解説します。

ロイター通信 HPより

売れていない理由は下記の通りです。

  • 中途半端な存在
  • 目新しさの無さ
  • エアラインの経営悪化

順番に解説します。


中途半端な存在

A330ceoが開発された当時、エアバスは双発旅客機はA320シリーズとA300シリーズの2シリーズしか揃えられていませんでした。また、A300シリーズはエアバスが初めて開発した旅客機であり、より近代化したワイドボディー機の開発をA300型の初飛行した1972年から15年後の1987年に、A330ceoの開発が決定されました。当時は先に就航していたB767シリーズよりも大型機かつ航続距離の長いA330ceoがエアラインのニーズを掴み、世界各国のエアラインからA330−200型及びA330−300型は受注を伸ばしました。エアラインによってはDCー10型やトライスターといった3発機の置き換えで発注したケースもありました。

しかし、A330neoシリーズの中でA330−900型が初飛行した2017年にはライバルのボーイングはB787シリーズを就航させていました。そして、エアバス自身もA330neoより大型機かつ航続距離の長いA350シリーズを就航させていました。このA350シリーズの基本モデルとなるA350−900型は元々A330ceoの設計を引き継いで開発する予定でしたが、エアラインからより大型機となる胴体幅を求められたことで新設計の機体となりました。結果として、当時のエアラインはA330neoシリーズではなくA350シリーズを求めていたことが開発過程でも伺えます。

そして、2018年にはA321neoシリーズの航続距離延長型であるA321neoLRが初飛行しました。そして2022年現在はA321neoLRの航続距離をさらに延長したA321neoXLRの開発が進められています。このA321neoXLRは東京からオーストラリアのシドニーまでの航続距離があります。従来は単通路機では届かない路線にA330ceoが就航していたケースがありましたが、今後はA321neoシリーズで満たされてしまうことで、A330neoシリーズの出番が少ない状況が出来上がっています。

A330neoシリーズはA350シリーズとA321シリーズの間で中途半端なサイズになってしまったのです。

Airbus HPより

目新しさの無さ

先ほど、A350シリーズが当初、A330ceoシリーズの改良型として登場する可能性があったと記載しましたが、A330neoシリーズは結果としてA350シリーズの開発で培われた技術を流用した機体となりました。例えば、エンジンはA350シリーズ向けに開発されたロールスロイス製の出力を落としたものを採用し、翼の形状はA350シリーズのものを参考にA330neo用に新設計しました。しかし、胴体は従来のA330ceoシリーズのものを継承し、その他の構成部品もできるだけA330ceoとの共通性を持たせるために流用しています。その結果、開発コンセプト通り目新しさの無い機体となりました。エンジンを新型に置き換えたことで燃費向上につながっていますが、それ以外の利点が見当たらないことでエアラインが導入する決め手にかける状況であることが伺えます。


エアラインの経営悪化

こちらが販売苦戦の一番の理由と言えます。新型コロナウイルス感染拡大により、世界各地にて移動が制限されたことで旅客機の需要は貨物のみとなりました。その結果、A380−800型、B777−300ER型をはじめ、A330シリーズも例外なく地上待機となり、現在もまだ砂漠にて長期保管されている機体や退役した機体もあります。日本のエアラインにおいてもJALやANAが老朽化した機体の退役を前倒ししたり、国内線で運行することの難しいB777−300ER型を早期売却したりと資金繰りに苦慮しているニュースが何度も聞かれました。そのため、世界各国のエアラインにおいては需要変動に対応の難しい中型〜大型旅客機の新規発注には慎重にならざるを得ず、A320neoシリーズやB737MAXシリーズといった小型機による運行を重視した姿勢が見受けられます。

そのため、A330neoシリーズの販売においてはしばらくは逆風が吹き荒れると見込まれます。

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