先月、日本航空(JAL)がB737MAXシリーズのB737-8型機を21機発注しました。これらは現在運用中のB737-800型機の後継機種として選定され、2026年より導入が開始されます。
しかし、JALグループが運用するB737-800型機は60機超あることから、今回の発注分は置き換え対象の3割ほどしか占めていません。そのため、残り7割はどうするのか航空ファンの間で話題になっています。
この追加発注があるのか、そして機体モデルに対する筆者予想は下記の通りです。
まず、タイトルの通り、”JALはB737MAXを追加発注しないのか?”に対しての回答は、”どちらとも言えない”と考えます。つまり、A320neoシリーズの発注余地もまだ残されていると考えます。そのカギを握るのは、日本トランスオーシャン航空(JTA)の動向です。
JALとJTAの利害の一致
JTAは主に沖縄を発着する路線をB737-800型機にて運行する地域航空会社です。一方で、JALグループの一員であり、機体の塗装はほぼJALと同じものを採用しています。そのため、JALとJTAは経営において密接な関係性にあることが伺えます。
過去、JALグループにはJALエクスプレスというJTAと同じくB737シリーズを用いて運行する航空会社がありました。主に地方路線を運航していましたが、2014年10月にJAL本体に吸収されています。JALエクスプレスの設立目的は低コスト化です。JAL本体の客室乗務員とは異なる制服を着用しスカイキャストと呼ばれ、機内清掃も業務の一つとして担っていたとのことです。
当時のJALエクスプレスに相当する低コストの運行部門・会社が存在しないJALグループですが、対するANAはエアージャパン・ANAウイングスを従来の地方路線だけではなく幹線や国際線においても活用しています。そのため、JALはJALエクスプレスに相当する運行部門・会社としてJTAに注目していると推測します。
JTAは主に沖縄路線を運航していますが、東京羽田空港や大阪伊丹空港といった大都市だけではなく、小松空港や岡山空港といった地方空港にも乗り入れています。そのため、上記の推測する戦略の先駆けとして、JTAが小松↔羽田、岡山↔羽田の運航受託を2023年より開始しました。今後、同様にJTAが乗り入れる空港から沖縄を結ばないルートの運航を受託し、拡大させていくと推測します。
JTAにとって運航受託は経営を安定させる戦略の一つです。沖縄路線は観光客がメインであることから、冬場の閑散期は需要が落ち込みます。そのため、それ以外の時期で売上や利益を確保させる必要があります。一方、JAL便の受託を行うと、安定した売上を確保することができます。また、新機材の導入に関してJALからの移管、もしくはリースという形態をとることで、JTAにとって多額の支出を避けることが可能となります。
よって、JALにとってB737シリーズにて運行する路線をJTAへ移管することはJALとJTAがWin-Winの関係となり、JALはJTAを後押しすべく、JALはB737-8型機をJTAへ早期に移管するのではないかと推測します。
B737-800型機とB767-300型機の後継機はA321neo・B737-10になるのでは?
JALが現在B737シリーズを使用する路線をJTAへ運行委託することで、JAL本体はA350シリーズ、B787シリーズを運行する幹線に集中することになります。しかし、経年化しているB767-300型機の後継機種が決まっていません。おそらく、2026年にB737-8型機を導入し、運航実績を見定めた上で、B737-10型機を発注、もしくはA321neo型を発注すると考えます。
その理由として、現在のJAL便の輸送力不足が挙げられます。例えば準幹線と呼ばれる愛媛県の松山空港と東京羽田空港を結ぶ路線では、JALはB737-800型機(165席)のみに対し、ANAはB787-8型機(主に335席)を運行しており、輸送量は約2倍の開きがあります。これはJAL保有機材において、B737-800型機の次に大きな機体としてB767-300ER型機(252席)もしくはB787-8型機(292席)となってしまうためです。そのため、JALにとって、この客席差を埋める機体を検討しているのではないかと考えます。
一方、JALはかつて経営破綻をした歴史があることから、多種多様な機種を導入することには否定的であると推測され、仮に新たなモデルの機体を導入する場合であっても、既に導入済みの機体との親和性の高い機種を選定することになると考えます。具体的にはA350シリーズとの親和性のあるA320neoシリーズ、もしくはB737-800型機やB737-8型機との親和性のあるB737-10型機です。
いずれにしても、まだB737-8型機を発注したばかりであり、追加発注をするのは2026年頃になるのではないかと考えており、その間は引き続き、追加発注の機種がB737MAXシリーズになるのか、それともA320neoシリーズになるのか、議論が尽きないことでしょう。