2023年12月15日、JALが導入予定のA350-1000型機の初号機(登録記号JA01WJ)が、エアバス社の製造工場のあるトゥールーズから羽田空港へ到着しました。私自身、ニュース動画にて羽田空港到着時の様子を確認しましたが、機体全長が長く、かつてのDC-8型機、愛称では”空の貴婦人”と呼ばれていたものに近い印象を受けました。全長については、既に導入済みのA350-900型機に対しA350-1000型機は約7m長いスペックとなります。

JALはA350-1000型機を13機発注しており、これらの機体にて、現在の国際線フラッグシップであるB777-300ER型機を置き換える予定です。JAL以外においても、A350-1000型機を導入するエアラインが着実に増えており、かつてはB777-300ER型機が就航していた路線にA350-1000型機が就航するケースも発生しています。


B777-300ER型機の本来の後継機種

B777-300ER型機の初飛行は、今から約20年前の2003年2月24日でした。そのため、ボーイング社はB777-300ER型機の後継機種として、B777-9型機(B777Xシリーズ)を開発中です。B777-9型機の初飛行は2020年1月25日でしたが、現時点ではまだエアラインへの引き渡しができておらず、公式の見解としては2025年になるとのことです。これは初飛行から5年も過ぎており、開発が難航していると言わざるを得ません。開発遅延により、既にB777-9型機を発注済みのエアラインでは機材繰りを見直しており、例えばルフトハンザドイツ航空では新型コロナウイルス感染拡大により退役予定であったA380型機を復活させています。

ボーイング社HPより(B777-8型機)

B777-X型機の遅延により”棚ぼた効果”のA350-1000型機

初飛行から20年が経過し始めたB777-300ER型機の後継機種の目途が立たない状況から、A350-900型機を運行しているエアラインではA350-1000型機を新規発注する動きがみられます。2023年12月15日、ターキッシュエアラインズはA350-1000型機を15機発注しました。現在、B777-300ER型機は35機保有しており、すべてを置き換える機数には満たないことから、A350-1000型機とB777-9型機を天秤に架けているのではないかと私自身、推測しています。同様に、エバー航空もA350-1000型機を18機発注済みである一方、B777-300ER型機は34機保有しており、他機種の導入も見定めているのではないかと思われます。

エアラインとしては、現在のエアバス社の最大機種であるA350-1000型機とボーイング社の最大機種であるB777-9型機の両方で競わせたい一方、B777-9型機の就航実績がまだゼロであることから、機種選定時期として止むを得なくA350-1000型機を選定しているエアラインが一定数存在すると考えられます。そのため、A350-900型機を運行するエアラインでは、A350-1000型機を追加発注し、機歴が10年を超えたB777-300ER型機を代替するケースが出ています。エアバス社にとっては、”棚ぼた効果”により、A350-1000型機の受注が増えている状況です。(補足としては、A350-1000型機は優れた快適性・経済性・信頼性を誇っており、この実績が認められての受注増加であることも付け加えておきます。)

一方で、JALのように、B777-200ER型機の後継機種としてA350-900型機、B777-300ER型機はA350-1000型機を選定し、一度に後継機種を発注した事例は海外では稀に思われます。そのため、今回はB777-9型機を選定せずA350-1000型機を選定したことで、数か月の遅延は発生しているもののB777-9型機に比べるとほぼ予定通りに機材更新を進められている状況です。


次世代のフラッグシップとして、エアバス社はA350-1000型機、ボーイング社はB777-9型機を推しており、どちらも旧世代の機種に比べて優れていることは言うまでもありません。そのため、今後、国内外の空港でこれらの機種が肩を並べて各地を結ぶ姿を楽しみにしたいと思います。