A350シリーズは現在販売されているエアバス社のラインナップの中で最も大型機に分類される旅客機です。日本国内ではJALが標準モデルであるA350-900型機を2019年から運行しており、2024年には胴体延長タイプのA350-1000型機を運行開始する予定です。また、海外においても多数のエアラインがA350シリーズを運行しており、日本の空の玄関口である羽田空港および成田空港において多数の海外エアラインの機体が駐機している様子を見ることができます。

先日のドバイエアショーにおいては、エジプト航空、エチオピア航空、エミレーツ航空がA350シリーズを発注しており、好調な受注が続いています。(ドバイエアショーの受注記録については下記リンク先をご覧ください)

今回の記事では、A350シリーズがヒットしている理由を3つ解説します。


高い燃費性能

  • どの程度燃費性能が良いのか?

A350シリーズは同サイズの従来型機(B777-200ER)に比べ、約25%の燃費改善を達成しています。大きな要因としては、①炭素繊維複合材による軽量化、②新型エンジンロールスロイス社製トレントXWBの搭載による2点が貢献しています。

JALウェブサイトより引用。https://www.jal.co.jp/jp/ja/dom/A350/
  • 燃費の良いA350シリーズに置き換えられるB777シリーズ

従来型機とされるB777-200ER型機についても、当時はMD-11型機やDC-10型機といった3発機やB747-400型機に対し、1席当たりの燃費性能が優れるということで次々に就航を果たしましたが、より燃費性能の優れた次世代機であるA350シリーズの登場により、B777-200ER型機を見かける機会は減っています。JALのB777-200ER型機においては、定期便としての運航は2023年11月12日に終了しました。JAL以外においても、シンガポール航空、アリタリア航空、マレーシア航空、タイ国際航空など、B777-200ER型機の運航を終了し、A350-900型機に置き換えているエアラインが多数あります。

  • 原油価格の高騰

原油価格(灯油)については、2019年までは5万円/キロリットルにて推移していましたが、直近では倍近い12万円/キロリットルにて推移しています。

新電力ネットより引用。https://pps-net.org/statistics/crude-oil3

理由としては、①原油価格自体がロシア・ウクライナ情勢により高騰したこと、②円安による輸入価格高騰がダブルで効いています。②については日本固有の状況ですが、①については世界各国共通の課題であり、A350シリーズの導入により燃料代を節約したいエアラインが多数存在する状況です。


航空需要の増大に対応した機体サイズ

・B787シリーズでは足りない

新型コロナウイルスの感染拡大期には海外渡航の自粛を余儀なくされていましたが、現在はほとんどの国にて入国規制が撤廃されています。そのため、国内旅行にて航空機を利用する人だけではなく、海外旅行にて航空機を利用する人もコロナ禍前に戻ってきている状況です。そのため、国内外のエアラインではコロナ禍にて減便していた旅客便を復活させ、更には増便させる動きを取っています。一方、コロナ禍においては多くの乗客を乗せられるB747-400型機、B777-300ER型機、A380型機を退役させ、燃料費を含む運航コストの安価なB787シリーズが重宝されましたが、B787シリーズは最も販売されているB787-9型機は3クラス制250席程度であり、退役させたB777-200ER型機等に対しては少ない座席数となります。そのため、B787-9型機より大型のA350-900型機が重宝されている状況です。


ライバル機の開発遅延による選択肢の無さ

ボーイング社ウェブサイトより引用。https://www.boeing.com/commercial/777x/

2013年よりB777Xシリーズの開発がスタートし、2020年に初飛行を行ったものの、初就航は2025年となっています。当初の計画では2019年に初就航を予定していましたが、B737MAX型機の墜落事故によるボーイング社開発体制見直しにより、B777Xシリーズの開発は大幅に遅れている状況です。その結果、B777-300ER型機を運行するエアラインの中には、B777Xシリーズを発注せずにA350-1000型機を発注するケースも出始めています。(エバー航空等)


長距離国際線においては、A350-900型機およびA350-1000型機がフラッグシップと呼ばれる時代に突入しており、今後もますます国内線および国際線にて見かける機会が増えそうですね。

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