JALは2023年にA350-1000型を就航させると表明しています。既に国内線にてA350-900型は運行されていますが、JALにとってA350-1000型は初就航となります。そして、A350-1000型が次々と就航する中で、JALのフラッグシップを担ったB777-300ER型は退役を予定しています。
A350-900型の試験機の初飛行からちょうど10年が経つ2023年に就航するA350-1000型はB777-300ER型と比べ何がすごいのか、本記事では解説します。
B777-300ER型との比較において、ポイントは以下の4点です。
- 燃費性能が優れる
- 客室内の快適性が優れる
- 巡航速度が速い
- 航続距離が長い
燃費性能が優れる
B777-300ER型の原型となるB777-200型が初飛行したのは1994年です。派生型となるB777-300ER型が初飛行したのは2003年となります。B777-200型の初飛行からもうすぐ30年の間にエンジンおよび機体軽量化により燃費性能は大きく向上しました。
エンジンについては進歩が目覚ましく、より高温に耐えられる金属材料やより軽量な複合材の採用により、大口径でバイパス比の大きなエンジンが登場しました。B777-300ER型はGEが独占供給しているのに対し、A350は-900、-1000共にロールスロイスが独占供給しています。また、ANAが発注済みのB777-9型についてはB777-300ER型と同様にGEが独占供給となりました。独占供給することで機体にマッチしたエンジン開発が可能となり、機体が受注していてもエンジンが他社に発注されてしまうことでの研究費の回収リスクを抑えることが可能となりました。この独占供給体制も燃費向上に貢献していると考えられます。
具体的な燃費性能についてエアバスによると、A350はB777に対して25%優れていると述べています。
客室内の快適性が優れる
A350-1000型は-900型共に炭素繊維が多く使われています。これは先ほど述べた燃費性能が優れることにも関連しますが、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics=CFRP)は金属材料に比べて同等の強度である一方で重量が軽いことから、A350では機体構造の約70%にCFRPが使用されています。副産物として、機体が錆に強くなったことからB777-300ER型には搭載できなかった湿度を保つ機能を付けた空調機を搭載しています。尚、この空調装置は一般家庭で使用される水を用いた加湿器ではありません。この空調装置によりB777シリーズでは10~20%であった湿度を、A350シリーズではそれ以上の湿度に保つことができるようになりました。
また、燃費向上に貢献した新型エンジンですが、騒音低減も同時に達成しています。A350シリーズ専用のロールスロイス製エンジン”トレント XWB”はGE製”GE90-115B”よりも低騒音なので、機内に入り込む騒音も少なくなり、乗客にとっては静かな機内で快適に過ごせるようになりました。
巡航速度が速い
A350シリーズの巡航速度はマッハ0.85 (903 km/h)ですが、B777シリーズの巡航速度はマッハ0.84 (892 km/h)となり、若干A350の方が速いです。数値としては一見すると差は小さいように思われますが、10時間を超える長距離便となると数十分単位で到着時刻にずれが生じます。そのため、速い巡航速度を出せるA350シリーズの方が遅れの挽回や早着といった時間のメリットも享受できると思われます。一方、B777シリーズに対して優勢のA350シリーズですがB787シリーズとは同じ巡航速度となります。B777シリーズの最新型となるB777-Xシリーズの巡航速度は未公表につき発表を待ちたいと思います。
航続距離が長い
A350-1000型の航続距離は16,100 kmとなります。東京から直線距離で調べると、ペルーの首都リマが該当します。一方、B777-300ER型の航続距離は14,594 kmとなります。同じく東京から直線距離で調べると、ベネズエラの首都カラカスが該当します。いずれの機体も南アメリカまでは飛行可能ですが、残念ながら日本から直行便が就航するほどの需要はなさそうなので、A350-1000型の航続距離を活かせる路線開設には至らず、B777-300ER型が現在就航している北米や欧州路線にて後継機種として活躍することが可能です。
以上、JALの次期フラッグシップとなるA350-1000型が現在のフラッグシップであるB777-300ER型より優れているところを解説しました。
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