スペインの現地時間2022年12月2日、ルフトハンザドイツ航空はA380型機の飛行を約2年ぶりに再開しました。今回飛行を再開したのはルフトハンザドイツ航空が保有するA380型機のうちの1機のみです。この機体は新型コロナウイルスの感染拡大による減便の影響で、スペインのテルエル空港にドイツから移動し駐機していた機体です。A380型機は”空飛ぶ豪華客船”と呼ばれ、航空ファンだけではなく一般の旅行者からも愛されている機体ですが、新型コロナウイルスによる航空会社の経営悪化からここ2年で一気に退役した機体が増えました。その状況下で、路線復帰に向けてドイツに戻っていったこのA380型機のニュースを読み、私自身安堵しました。

筆者撮影。成田空港にて偶然目撃したルフトハンザドイツ航空のA380型機。

今回の記事では、なぜA380型が路線復帰を果たしているのか解説します。ポイントは以下の3点です。

  • 航空需要の急激な回復
  • ファーストクラス需要の増加
  • 新型機受領遅れ

航空需要の急激な回復
 2019年12月頃から世界各国に広まった新型コロナウイルスですが、2022年12月時点では既に収束したかのように、世界各国の入国制限は撤廃・緩和されています。日本においても秋ごろから入国時に必須とされたPCR検査による陰性証明が不要となり、2022年10月の入国者数は約50万人となりました。一方で、コロナ前の同月には約250万人が来日していたため、まだ5分の1ほどに留まっています。
 海外に目を向けると、欧米を中心にアフターコロナの機運が高まりました。そのため、イギリスのヒースロー空港などのハブ空港においては急激な航空需要の高まりに対し、空港スタッフの人手不足が加わり混雑が激化しています。これは空港側だけではなくエアライン側においても同様であり、解雇や無給休暇となっていたパイロットや客室乗務員の復帰が想定よりも進まず、突然の欠航や遅れが発生しました。そのため、少ない人数で多くの乗客を運べる大型機が国際線においては重宝されています。
この恩恵を一番受けているのはアラブ首長国連邦を拠点とするエミレーツ航空です。同社はA380型機を118機保有しており、この数は世界一となります。コロナ禍により一部運航停止を余儀なくされておりますが、50機以上の機体を運行している状況から今の航空需要急増を取りこぼさずに対応できている数少ないエアラインとなります。

筆者撮影。成田空港へ着陸進入するエミレーツ航空のA380型機。

ファーストクラス需要の増加
 先ほど航空需要の急回復の状況について述べましたが、コロナ禍において自由に海外渡航できなかった富裕層による旅行需要の高まりもA380型機にとっては幸運でした。A380型機はエアラインにとってフラッグシップと位置づけられており、ファーストクラスを設置するケースが多いです。特にエティハド航空においては、A380型機に”The Residence”というファーストクラスの上を行く空間を設置しています。これら贅沢な空間はA380型機という世界最大の旅客機であるがゆえに設置が叶いました。コロナ禍による自粛から解放された富裕層の中にはファーストクラスやその上のクラスを利用して海外旅行を楽しむ様子も報道されており、ファーストクラスを含めた上級クラスの人気の高さを物語っています。

 ANAが運行するA380型機、愛称”フライングホヌ”ですが、こちらもB777-300ER型と共にファーストクラスを搭載しています。このフライングホヌは2022年12月時点で毎日運航まで回復していませんが、運行する日は高い搭乗率を維持しているようです。特にファーストクラスおよびビジネスクラスが多く埋まっているとのレビューから、旅行需要の高さを物語っています。JALにおいてはB787型機をハワイ路線に投入していましたが、ホノルルマラソンや年末年始に合わせてANA同様にファーストクラスを搭載したB777-300ER型を投入予定です。

筆者撮影。成田空港へ着陸進入するANAのA380型機”フライングホヌ”。

新型機受領遅れ
ルフトハンザドイツ航空がA380型機を運行に復帰させる理由の一つとして、導入予定のB777-X型の開発が遅延していることを挙げています。B777-X型は初飛行からもうすぐ3年が経過しようとしていますが、まだ確実な納入予定は見えていません。そのため、手元にある機体を運行に復帰させ、不足するキャパシティを補おうとしています。

LufthansaのHPより。B777-9型。

ここまでご説明した3点についてはA380型機にとって追い風であることは間違いありません。ただ、A380型機を待ち受けている運命には、向かい風もあります。例えば、ルフトハンザドイツ航空においては、B777-X型が順次納入され次第、A380型機は退役することは前述の通り確実です。また旅客機は長くて20年ほどで新型機に置き換えられます。A380型機を最も多く運行しているエミレーツ航空にとってA380型機が唯一無二の存在であるとしても、使い続けることをいつかは断念せざるを得ません。

筆者撮影。初めて搭乗したA380型機。シンガポール航空(9V-SKE、2021年にスクラップとなった)

私個人としてはA380型機にとても愛着があることから、長く世界の空を飛び回っていてほしいと思います。そして、機会があれば(家計に余裕が出れば)ANAのA380型機に乗りホノルルへ行きたいものです。

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