2022年時点では、羽田空港や成田空港で見かける国際線機材の主役は、主にB777、B787、A350となっています。筆者が子供の頃はB747-400が日本の空を飛び交っている状況でしたので、飛行機の旅をする時に目の前に駐機していた機体がB767やB737だった時にはサイズ感からガッカリしたのを今でも覚えています。

そんな主役の座を担っているB777ではありますが、新型コロナウイルス感染拡大期には日本を離れて米国カリフォルニア州のヴィクタービルにある砂漠の駐機場に移されたB777シリーズが数多くいました。塗装が消されて真っ白になり離日する機体を見て寂しくなりました。以下はヴィクタービルにある”Southern California Logistics Airport”の航空写真です。駐機スペースの一部は未舗装のままで、多くの機体が停められていることが分かります。

Google Mapより

今回のテーマは”現役B777シリーズの未来”とし、考えてみます。

テーマを語る上でのポイントは以下の2点です。

  • B777-200初飛行からもうすぐ30年
  • 唯一無二であったB777シリーズの後継機種登場
  • 旅客型から貨物型への改修プロジェクトの進捗

まず、”B777-200初飛行からもうすぐ30年”について解説します。

B777は1994年に初飛行を行いました。最初に開発されたモデルはB777-200型であり、B767とB747のサイズ差を埋める仕様にて設計されました。初就航はB767と同じくユナイテッド航空となり、以降世界中のエアラインにて見かけるようになりました。更に時代が進むと、B777だけではなくB767やA330を含めたエンジン2基を搭載する双発機の信頼性向上(故障発生の低さ)により、海上飛行規制が緩和されたことで、B777を中心に多くの路線に就航することになりました。B777シリーズの中でもB777-200ERとB777-300ERは、航続距離とキャパシティの両面から経年化したB747-400の存在を脅かす存在となり、当初の”補完”から”置換”へとB777の役割が変化しました。その結果、コロナ禍の前はB777-300ERが成田空港では頻繁に見られるようになっていました。

しかし、現役B777シリーズの登場からもうすぐ30年の間に、後継機種やライバル機種も登場し始めました。続いては、”唯一無二であったB777シリーズの後継機種登場”について解説します。具体的にはB777-X型(-8/-9)が後継機種となります。しかし、B747-400の置き換えがダウンサイジングとしてB777-200ER/-300ERにて進んだように、コロナ禍では一回り小さいB787-9/10にて進むケースも見られます。また、エアバスはB777への対抗機種としてA350シリーズを開発しました。A350-900/-1000型共に、B777シリーズを運行するエアラインから受注を獲得し、順調にセールスを伸ばしています。

ボーイングエアバス
B777-8/-9(後継機種)A350-900/-1000(競合機種)
B787-9/-10(競合機種)

日本国内のエアラインでは、JALがB777の後継機種としてA350-900/-1000型を発注しています。A350-1000型は2023年度に導入予定のため、国際線にて活躍するB777-300ER型を順次置き換えることになります。

現役B777が登場したころには存在しなかった競合機種が表れたことで、現在空を飛んでいるB777はどうなってしまうのでしょうか?それは貨物機への改造です。最後に、”旅客型から貨物型への改修プロジェクトの進捗”について解説します。

現役B777によって退役することになったB747-400型は貨物機へと改修された機体がありました。具体的には、B747-400BCF(Boeing Converted Freighter)やB747-400BDSF(Bedek Special Freighter)と呼ばれています。それでは、B777-200ERや-300ERも同じく貨物機へ改修されるのでしょうか?答えはNoです。実は、現時点では旅客型B777から貨物機へ改造された事例は1件もありません。以前、旅客型のB777-200ERを貨物型へ改修する検討が行われましたが、実現には至らなかったようです。理由としては、メインデッキの構造強化に莫大なコストが掛かることです。貨物型への改修は出来るだけ低コストで行う必要があります。そのため、改造費用が高額になれば、新造機であるB777-200LRをベースとしたB777Fの導入も選択肢に入ってきます。

現状では、B777-200/-200ER型は部品取りのために解体されるケースがほとんどとなっています。一方で、B777-300ERは貨物機への改修プロジェクトが進行中です。以下の写真は改修プロジェクトを進めるイスラエルIAIの報告です。2021年10月にB777-300ERの後部胴体を切断し、貨物ドア設置に向けた改造を進めています。

B777-300ERは現役B777シリーズにて最も機体サイズが大きいことから高額であり、かつハイパワーのエンジンを搭載しています。そのため、貨物機への改修にある程度のコストが掛かったとしても投資回収が可能と判断されたのかもしれません。B777-300ER同様に、大型のエンジンを搭載し、かつB777FのベースモデルであるB777-200LRも貨物機への改修対象になり得るかもしれません。

そうなると、現役B777シリーズでは、B777-300ERが貨物機への改修にて安泰かもしれません。一方で、B777-200LRも旅客型としては航続距離の長さで不人気となっていましたが、貨物機への改修にて道が開けるかもしれません。B777-200/-200ERについても退役し解体された場合も部品としては世界のそらを飛び回ることでしょう。

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